さくらニュース 16年 6月号 戦略と戦術 その2

2016年10月13日 / さくらニュース

仕事は戦略的に その2

 

前回は戦略について太平洋戦争とIBMの日本進出の事例をお伝えしました。今回はさらに分かりやすいビジネス戦略をお伝えしたいと思います。筆者がサラリーマン時代に所属していた富士ゼロックス(FX社)のコピー機業界のお話をします。米国で発明されたゼロックスのコピー機は開発費用が莫大だったため機械を非常に高価にしなくてはなりませんでした。しかし、高価にすれば多数売れません。そこで機械を売らずにレンタルにするアイデアでビジネス展開をしました。レンタルにするだけではなく、今は多くの人が知っているコピーカウンター料金システムにしました。顧客がコピーをとればとるほど利益が上がるシステムにしたわけです。コピー量の多い顧客は大企業や官庁です。ですから日本のFX社は戦略として大手企業を攻略し大成功しました。ただ、レンタル価格が高額でしたので営業マンのレベルが高くないと売れません。そこで自社営業マンを教育し直販で高度な営業手法で成功しました。これが戦術の一つです。国産後発コピー機の企業はリコー(R社)やキャノン(C社)でした。両社は後発なので先発FX社とは違う戦略をとりました。大手顧客は先発FX社が独占状態でしたので、中小企業に戦略目標を定めました。大手と中小ではニーズや販売手法に大きな違いがありました。大手のニーズはコピー量が多いのでコピー速度が速いことや信頼性(故障が少ない)、コピー質が重要でした。逆に中小企業のニーズは安価小型で速度が遅く多少故障があってもコピー量が少ないので大手ほどは問題なしでコピー質も大手ほど気にはしません。このように大手と中小では大きくニーズが異なります。その他、違うのは台数需要の市場の違いです。大手は一台当たりのコピー量は非常に多いので高速機がニーズです。ただ台数は多くは必要ありません。逆に日本の中小企業は小型機が必要であり、企業数が非常に多いので台数が多く必要です。量産すると同時に大手市場とは違い営業マン数がケタ違いに必要です。そこで後発の2社は直販せず、特約店戦略をとり地方の中小事務機販売店を活用する販売戦略をとりました。R社やC社はその戦略が成功し中小企業市場で一定のシェアを確保しました。FX社はその状態を指をくわえてはいません。中小市場も攻略します。そのため小型機も生産、販売も全国に販売会社を作り、特約店も開拓、契約し営業マンの人数も確保するようになります。逆にR社やC社は高速コピー機も開発し徐々に全面戦争の状態になってゆきます。しかしながら元々の市場で得意だったFX社は相変わらず大手市場に強みを発揮しています。同様に同社の強みだった営業能力を教育する社員教育の別会社(富士ゼロックス総合教育研究所)も作ることになりました。こうして考えると企業の戦略は非常に重要だと分かると思います。