さくらニュース 17年 3月号 愚者は経験に学び
2017年3月6日 / さくらニュース
愚者は経験に学び賢者は歴史に学ぶ
スポーツの監督・会社の上司で、まだまだ怒鳴り飛ばすような部下育成をする人が多いようです。「お前の欠点はなあ、バットスイングがフラットじゃないんだよ。何べん言ったら分かるんだよ。家で素振りやってきているか」こういう人は、なぜ否定的メッセージで育成しようとしているのかというと、過去に自分がそのように育てられたから、という人が多いようです。こういう人が経験に学ぶということになるでしょう。歴史上の人物で良いリーダーだったような人はそういう否定的メッセージ発信で成功したでしょうか?ということを考えていただきたいと思います。以前このコラムでもご紹介したことがあると思ますが、二宮尊徳が次のような言葉を残しています。「可愛くば五つ教えて三つ褒め一つ叱ってよき人とせよ」。江戸時代の思想家佐藤一斎は「十中七つ褒め三つ叱る」(十のうち七つは褒めて三つ叱る)。太平洋戦争の海軍司令官・山本五十六は「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ」と言っています。歴史上の有名な人物で、「ただ怒鳴り飛ばせ」「怒れ」「ただ叱れ」というようなことを言っている人の言葉はありません。よく考えていただきたい。信頼関係のない人の言うことに従うでしょうか。いつでもただ他者を否定するようなメッセージを発信する人を心から信頼するでしょうか。なんのかんの言っても人は自分が成長するような人、すなわち信頼関係のあるような人に従うのは当たり前だと思います。
ところで、筆者は講演会で多くの聴衆の前で次のように質問することがあります。「皆さんご自身が褒められて育つタイプか、叱られて育つタイプか。どちらだと思うか挙手して下さい」と。どちらが多いと思いますか? 90%以上は前者すなわち褒められて育つという方に挙手します。筆者が講師の陸上自衛隊員向けの研修でも同じようなことでした。残りの10%の方すなわち叱られて育つというタイプの皆さんでもあくまで信頼している上司のもとではということだと思います。ただ、リーダーになったばかりの人は他者の良い点を見つけるのが難しいようです。良い点を見つけるには、まずは社会人だったら当たり前にできている点を見つけるといいと思います。例えば、「ここ3か月遅刻がないね」「日報月報がちゃんと納期通りに提出されているね」などです。こういうことは自分が良い点が重要だと思えば探せるものです。もう一つ重要なことは部下の良い点を見つけても言葉を口にする勇気が必要だということです。今までそのような良い点を言わなかった人が言うと、周りからあれ、あの人変わったの?などと思われるのが嫌で言えない人も多いのです。そこは勇気をもって変わって(変わるとは成長すること)行くことが重要です。歴史に学んで自分が成長しましょう。