さくらニュース 19年 10月号 商品力と営業力
2019年11月5日 / さくらニュース
商品力と営業力
筆者はかつて産業給食弁当の会社の営業コンサルタントをしていました。その会社は工場や郊外の事務所などで社員食堂ではなく、お弁当を昼食にしているお客様に配達し、ビジネス展開をしています。多くの業種と同様に競合があり、営業マンが活動しています。その営業プロセスでは試食というイベントがあり一般的には食堂や会議室にお弁当を食べている社員が集合し試食が行われます。その場でアンケートを記入してもらいその職場でのお弁当を決定するのが一般的な営業手法です。その際重要になるのが、当然ですが美味しさと価格です。両方合わせて商品力だとします。その商品力と営業力について考えます。
どこの業界でも商品力が大きな要素を持っているなら市場を席捲できるはずです。しかし、そうはいかないのが現実です。筆者が営業コンサルに出向く前は「試食」というのは例えば、10人の職場であれば営業マンが10食分の弁当とアンケートを午前中に持参し、午後に弁当箱を回収し、担当者からアンケート結果を見せてもらい自社の弁当にしてもらえるかを聞きだす営業活動でした。このままですと美味しさと価格という商品力に頼り切った営業活動になってしまいます。この「試食」というイベントに営業力を活用しようという考え方をお伝えします。まずは、弁当箱一個毎に小さな封筒に入れる二つのメモを作りました。
一つの文章は簡単に言えば「試食と言うチャンスを与えていただき感謝申し上げます。弊社のお弁当のこだわりは…」というようなものです。もう一つのメモは営業マンの自己紹介で出身地・出身校・趣味など記載したものです。さらに食堂や会議室で召し上がるような職場では皆さんに食べる際にパンフレットを配り2-3分のご挨拶をさせていただきます。 その際にはコピーで簡単に作成できる「手品のようなもの」などをプレゼントしました。このように営業マンは試食というものは自分にとって重要なイベントなんです、という熱意を分かってもらえるような形にしたのです。このようなことが営業力です。弁当業界では競合との商品力がほぼ五分五分なのであれば30%が自社派30%が他社派、40%がどちらともいえない、というようなものです。ですから、どちらともいえないグループの40%を少しでも自社派にすればアンケート上で自社有利に導けます。この手法を用いてからは試食成功率は55%から80%に跳ね上がりました。このお弁当営業では複数の社員のアンケートという分かりやすい説明をしましたが、営業相手が個人相手の商品であっても心の中は自社のAか競合のBかの決心がふらついているものです。そこを工夫して営業力を使って勝つのです。